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至高の魔女2

第8話 疫病

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銀白の髪は王家の証。強い魔力を持って生まれたとしても王家でなければただの白髪でしかない。
強い魔力を持つ者同士の婚姻が代々と受け継がれ、その血筋には強大な魔力が脈々と積み重ねられたのだ。

その結果が銀白の髪という形となって現れたのだ。それゆえ王家の者は生まれ乍らにして強大な魔力を持つ。
それは長い長い年月をかけて培われたものなのだ。

「私はルドルフと申します。皇帝の座についてまだ年月も浅いですが、この銀白の髪はまぎれもなく王家の者。
陛下の代で終わるなどとは杞憂としか思えませんが・・・・」

確かにルドルフの言う通りだ。
王家ならばたとえ後継ぎが途絶えようともその皇族から養子を迎えればいいだけの事だ。

実の親子でなかろうとその血筋が途絶える事などありえないだろう。

「15年もベルナルド殿下の行方が分からぬとはいったい何故なのでしょうか?」

「15年前・・・・この帝都に恐ろしい流行り病が蔓延してそれは多くの犠牲が出たのじゃ・・・」

ルドルフの問いかけに陛下は15年前を思い出すように遠い目をしてぽつりぽつりと語り始めた。

帝都で蔓延した疫病はこの城内でも猛威を振るった。皇族達もバタバタと病に倒れた。
その死者の数ははかりりかねないものとなったのだ。

特に若い者ほどその進行は早く、将来有望な若者が多くを占めた。
それを危惧した皇帝は、後継ぎである皇太子のベルナルドを帝都から遠く離れた場所へと避難させる事にした。

当時まだ疫病が蔓延していない北都へと向かわせたのだった。
ベルナルドの目的は避難だけではなかった。

全国的に蔓延している疫病なのになぜか北の地にだけは疫病は発生していなかったからだ。
疫病が発生しない地の理なのか、それともその地に住む民の体質には何か疫病を撥ねつける力を持つのか・・・

なんらかの原因があるはずだ。
ベルナルドはそれを調査する為に北都に向かったのであった。

北都に着いて調査を始めた頃にはまだ連絡はあったと云う。
最後の連絡は、原因はオリポテンス山にあるらしいのでこれから向かうと言うものだった。

なんらかの手がかりを掴んだのであろうと思われた。
だが、それっきりベルナルドからの連絡は途絶えた。

その後ベルナルドの身を案じた皇帝はオリポテンス山へ捜索隊を派遣するが、見つかったのは賊に襲われたと思われる大破した馬車と護衛の兵士達の死骸であった。

残念ながらベルナルドの死骸は見つかる事はなかった。
あれほどの魔力と剣の達人であるベルナルドと精鋭の護衛達がたかが山賊ごときに全滅するとは、どう考えても腑に落ちない皇帝であった。

ほどなくして、あれほど猛威を振るっていたはずの疫病は不思議な事にピタリと治まった。
しかし、その時には既に皇族も皇帝を含めて高齢の者がわずかに生き残っただけであった。

それにより生き残った王家を引き継ぐべき若者は皇太子のベルナルドただ一人となった。
だが王家存続の唯一の希望であるベルナルドはその生死すら確認出来なかった。

「我はベルナルドは必ず生きていると信じ帰りを待ち続けたが、今日まで帰っては来なかった。」

陛下は寂しそうに眼を閉じ、最後にそう締め括った。
それは皇帝と言うよりは息子を案じる一人の父親の姿であった。

「そなたを見た時、すぐに別人であると気づきはしたが、あまりに当時のベルナルドに生き写しである事に驚いた。
しばしの間ではあったがベルナルドと会えた喜びを与えられた事に感謝しよう。」

「そのような事情があったとは・・・・
だが私はそれでもなんらかの王家存続の糸口があるような気がしてならないのです。」

「そうよ!このまま王家が滅亡するなんてありえないわ。
私はずっと王家の歴史を勉強していたけれど、そんな記録は無かったわ!」

ルドルフの言葉に同調するようにルーチェはつい口走ってしまった。
余計な事を言ってしまったとあわてて両手で口を塞ぐがあとの祭りである。

「ほう・・・歴史を?わが名はサミエルと言うのだが、私が最後の皇帝ではないのか?
まだこの王家にはなんらかの光が差すという事であろうか・・・・」

サミエル陛下はそう言いながらルーチェの方を見て期待に目を輝かせた。
この時代ではルーチェの衣装がウェデングドレスである事に気づいているかどうかは分からないが、明らかに豪華な衣装であるのは明白だ。

「この姫がルドルフ殿の正妃であるのだな?そうか・・・そうなのだな。」

サミエル殿下はふむふむと頷きながらなにやら自己満足しているようだ。

『おい。陛下はなにか勘違いしてないか?
まさかルドとルーチェがこの世界に残って後継ぎを・・・なんてことを?』

「えっ?ええ~~!だって私達はまだ結婚もしてないのに?」

ルーチェはあわてた。そ・・・それについさっきお断りしたばっかりだ。
この騒ぎですっかり忘れていた事を思い出したルーチェだった。

同時に心の痛みも思い出したのか急にしょんぼりと下を向いて黙ってしまうのだった。

「当り前よ!それに私達はなんとしても帰らなきゃいけないのよ。」

傍にいたケイトが付け加える。
そうだった。俺達はなんとしても双子星が重なる前に帰らないと危険なのだ。

「確かにルーチェは私の正妃と決めた者ではありますが、我々には帰られねばならぬ世界があります。
まだ帰る手段が見つかってはおりませんが・・・」

ルドルフはやんわりとサミエル陛下の思いを断ち切ろうとした。
だが、正妃と勘違いしたサミエル陛下の誤解を解こうとはしなかった。

陛下の勘違いを否定する事はルーチェの断りを受け入れる気がしたルドルフだった。
それはルドルフのルーチェの拒否に対する最後の抵抗のように俺は思った。

「そ・・そうか。やはり帰らねばならんのか。だが、帰る手段が見つからぬのではな・・・
ならば客人としてもてなそう。必要なだけ滞在するがいい。そちらの共の者も遠慮はいらんぞ。」

サミエル陛下もなかなかのものだ。その瞳にはまだ諦めてはいないようすが窺えた。
すっかりお供の護衛と侍女だと決めつけられたアルクとケイトであった。

「どうやら我々は紹介もなしのようですね。まあそれどころではないのでしょうが・・・」

「その方が自由に動けていいかもしれないわよ。侍女ごっこもおもしろそうね。」

小さな声でぶつぶつ不満を唱えるアルクとやる気まんまんのケイトであった。

「そうだ!明日は歓迎の宴を催そう!それまでゆるりと過ごされよ。」

そう言って陛下は部屋を後にした。
長く緊張した時間を過ごした俺達は本当に疲れていた。

陛下の言うように一刻も早くゆるりとしたいと心から思ったのであった。







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